「ORIGAMI-TOWER」をたてよ!

Gori note

■ものづくりと、物理と。

重力なんですよ、重力。まさに創造の天敵は、重力です。
これまでいろいろなものづくりをしていて、何度となく、重力が立ちはだかりました。
たとえばイベントや展示会のブースデザイン。
安全に「ものを立たせる」ということが、こうも難しいとは。
アクセサリー・デザイン。
首から下げると重力のバランスで、「ちがう、ちがう」という傾きになってしまったり。
「しっかり “物理”を勉強しておけばよかった」と、何度思ったことでしょう。
ものづくりって、結局は総合的な学習が必要なんですね。

さて、今回のワークショップは、「ORIGAMI-TOWERをたてよ!」。
明石高専、「造形」の第6回目の授業です。
ものづくりをしていて、物理的な負荷がかかって、「思っていたのと違うー」なんてことは、日常茶飯事。一定の条件を与えられたときに、コンセプトや美的感覚を重視するか、それとも物理的、構造的なことを重視するか…自分をメタ認知したり、他の人との考えをすり合わせたり、そういった学びあいの創造ワークが、今回の主旨です。

■テーマとルール

テーマ:「地球環境保全を啓発する、巨大建造モニュメント」

机上300mm以上の高さに、
できるだけたくさんの「人形」をのせる。
「人形」は、レゴブロック4凸の、4連づけのもの。

材料は、折り紙、のり、カッター(はさみ)
自然界のもの(動物、植物など)を見立てとする。
100分で企画制作、2分で人形のせ、2分の耐久検証。

4人チーム×10チーム。
できるだけたくさんの人形をのせたチームの勝ち。
もしくはコンセプトの優秀さ、造作物の美しさ、個性。

■制作タイム

制作時間は、100分。
グループで話し合って、コンセプトを立案。デザインスケッチ、プロトタイプづくり、制作…と、ペース配分を決めながら進めていきます。

どんな方針が決まったのでしょうか。みんな少しずつ手を動かしはじめます。ぼちぼちといろんな部品が出来てくるんですけどね、ちょっとずつ、ちょっとずつ、形が出来あがってくる過程が、ボクが、この造形授業で好きなところ。

夢中になって黙々と作るチーム。
わいわい楽しげに作るチーム。
リーダーシップと役割がしっかりしたチーム。…チームカラーも、それぞれ。

あちらこちらから、
「この場合はどうしたらいいんだろう」、
「いける、いける」
「ボスベイビーが、三角はこの世で最強、って言ってたで」など、がやがやと聞こえてきます。

なごやかにスタートしたワークも、制限時間が迫ってくると、あちこちでプチ・パニックがおこります。

あるチームは締め切り10分前に、焦って作品がこっぱみじんに崩壊。大悲鳴…というより、大爆笑です。くじけずに最後の突貫工事。もう、しっちゃかめっちゃか、わあわあ言いながら、時間がやってまいりました。

■チャレンジ・タイム

作品が完成したら、そこに「人形」をのせていきます。2分間という制限時間。

慌ててのせると、塔が崩れるかもしれない。でも、できるだけたくさんのせたい。欲ばってのせ過ぎると、また塔が崩れるかもしれない。全体を整えながら、慎重、かつ大胆に、チームみんなの息を合わせて。「もうやめといた方がいい」と言われても、
ついつい人は「もう少し」と、のせ過ぎてしまうもので。ガシャ〜ン!と、崩落事故がおこることもしばしば。パニックになりながら、「まだ30秒ある!やり直そう」と再奮起。まさに悲喜こもごものチャレンジ・タイムです。

■チェック・タイム

人形をのせ終えると、そこから耐久性のチェックです。そのまま何もせず、重みに耐えかねて崩れないか、2分間、経過観察します。

この2分間が大変。
じわ〜っと作品が変形してきて、バランスがじわじわ崩れてくる。もちろん、中には悲鳴とともにガラガラ〜っと音をたて、
派手に崩れていくチームも。

みんなこの2分間は、とても長〜く感じたことでしょう。だからこそ2分が経って「セーフ!」とコールした時の、みんなの安堵感と、歓声たるやもう。

■体験を「知」に変える

楽しかった時間が終わると、現実タイム。ふりかえりのレポートを書いてもらいます。おそらく、たくさん気づきがあったと思いますが、
それを「手で記す」という行為で、
自分の経験や思考として刻みこまれます。



ちなみにボクがおもしろいと思ったのは、男子がリーダーシップのグループは、感性よりも、構造を重視する傾向があります。
安定感はバツグンだけど、
意匠としては個性がない仕上がりになりがちです。
どちらかというとゲーム性を楽しんでいて、
ほかのチームよりもたくさん人形をのせるという競争心がモチベーションになっているようですね。



一方、女子がリーダーシップのチームは、
安定感やゲーム性というよりは、
きれいで個性的な作品に仕上げる傾向があります。
いや、ジェンダー・バイアスではなく。



これから5年間の学びで、
「安全で美しい」というバランスが育っていくんでしょうね。

 

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