ゴッホ展@2020

Kana note
image

ゴッホの〈糸杉〉。
びっくりたまげた。
エネルギーに圧倒されて…凄い。

ゴッホといえば〈ひまわり〉ですね、教科書で習いましたね、といった具合に
あまりにも有名なもんで、知ったような気になっていたけど
実際に作品を目の当たりにすると、こんな絵は観たことがない!と興奮してしまった。

全体の構図や色、手法、意図、などなど、絵画には色々な要素があるけれど
そんな色々はどうでもいいように思えるくらい(あくまで私にとって、です)
とにかく絵の持つパワーに驚かされて衝撃を受けた。
そうか、絵って凄いんだ、というふうに。

(ゴッホ自身は構図や色、意味など表現においての熱い想いを、弟テオへの手紙で綴っているので、こんなこと言ってすみません)

ゴッホの初期の頃の作品は農民画家として当時の日常の様子を描いているのだけど、
人にみるゴツゴツさとアンバランスさもあいまって画風から漂う暗いムードにやや拒絶したくなった。
それでも、ハーグ派といわれる、素朴で質素な暮らしの中にある美しさや豊かさといったものがじわじわと、しみじみと伝わってくる多くの作品は
日本の侘び寂びっぽい感覚(知らんけど)があって、こういったところにゴッホのルーツがあるんだなぁと発見できる。

展覧会後半は一転、パリへ。
印象派との出会いから作風が変わり出し、当時の作家たちが切磋琢磨していたムードも一緒に漂ってきてワクワクしてくる。
当時の作家の作品も並んでいて、それがまた豪華。
アドルフ・モンティセリの暗い背景に浮かぶ花がなんとも美しくてうっとりしたり、
中でもクロードモネの幻想的な風景はもはや抽象画のようにもみえて、ずっと観てられそう。
パリはとても華やかで多様で刺激的だったんだろうな。

ゴッホもアルルに移り、あの有名なタッチの画風が現れてくる。
こうやって色々な出会いにインスパイアされて独自の作品が生まれてくるんだなぁ。
初期の頃の絵に感じたあの独特のゴツゴツさが厚く塗られた明るい色の絵の具とマッチしたときに
匂い立つような迫ってくるような絵に変貌してつながっているのが興味深くて。
環境が変わると、ここまで変わるものなのかと。
ぐるぐるとしたタッチは「そう見えていた」んだろうか?

一見すると明るい色の作品の中にもどこか寂しげな雰囲気があるように感じていたけど(それは耳きり事件のせいで勝手にそう思ってたような気がする)
初期のころに描きたいと思っていた、あの素朴で質素な暮らしが現れているのかもしれない。

出会いによってじぶんの中にあるものが引き出されて、また新しいじぶんと出会って表現が広がっていく、
それが一連の作品を通して感じられて、画家の人生の豊かさに触れたようで感動した。

ゴッホ自身はその後、精神を病み病院に入ることになるが。
ここでの作品がまたエネルギッシュで。
病むというイメージも覆される。

image

これは〈薔薇〉。
花の表面的な美しさとかより、香りが漂ってきそうで…なんだろうこれは。
ゴッホの目には何が見えていたんだろう。何を感じていたんだろう。
絵と精神のつながりって、どうなってんのかな。

絵に対する探究心と熱意は冷めることなく、ただ描き続ける—、これが才能の正体というやつだろうか。
ゴッホ展、好き嫌いがふっとぶ、揺さぶられる体験だった。

※写真の絵はメトロポリタン美術館のパブリックドメインからダウンロードしてみました。
https://www.metmuseum.org/

コメント